吉成邦市(代表/稲穂メンバー)インタビュー 第1回

吉成邦市 インタビュー第一回(抄録)
収録:2018年4月13日
聞き手:島村 健(TFC広報担当)
立ち合い:土屋遥一朗・吉成駿介(TFC早苗メンバー)

――天栄村ファームコンソーシアムについて、4月1日からホームページもアップされているのですけれども、立ち上げから今後一年間、何をするか教えてください。

 ファームコンソーシアムという名前は金井先生につけていただいたんだけど、結局何をやりたいのかといったら、農家さんて個人経営なんですよね。
 個人経営だけでやっていると、どうしても情報とか、トライすることとかが限られてくる。
 それで私はたまたま役所にいるときに、(天栄米栽培)研究会というのを作って、やっぱり、全然違うわけですよね。同じことをやっても十通り、あとは違う土地、その年によって天候も全く違う。天候が、一人でやったら十年かかっても毎年違う、同じデータが取れないわけですよ。ところが、同じ天候の中で十人でやれば十通りのデータが取れるということがあるので、そういったのってすごく大きいなと思って。
で、やっぱり、農家はどうしても経験知に基づく部分のほうが多いんですよね。データをあまり重視しないので……というより、データの取り方がわからない、といった方がいいのかな。データを取っている方があまり身についていない状態。

 ある有名な農家さんと話をしたときに、五年日誌みたいな感じで毎日毎日データをつけているんだよね。それを見せてもらったときに、ああ、すごいな、と思って。
 役に立っているか立っていないかは別にしても、自分の備忘録というか、忘れないためにもやっているんだろうし、何年かにいっぺんには同じような天候も来るし、そういうことをすごく大事にしてやっている人がいたので、それはやっぱりいいことだな、と。我々もそういうふうにまねしたいな、という感じがしますよね。
 それをやるには、何人か必要ですよ。一人じゃなかなか難しい、二人でも。最低でも三人ぐらいはほしいな、というのがあって、今の三人のメンバーが集まっているんですね。

 この次の展開ってどうなるんだろう、というのがあって。今こういう「農業離れ」という、それはもうずーっと言われているんだけどね、俺百姓に入ってから三十何年経つけど、その当時から後継者不足っていう。もう、ほんとにね。こんなに同じこと繰り返しているのはバカかっていうほど繰り返しているわけですよ。後継者不足、高齢化だって。でも、そうはいっても、たいして変わらないんだよね、現状は。まあ、すぐに五年経ったらどうのこうの、というんだけど、五年経っても変わらないんだよ、あんまり。

――むしろ、悪くなる一方ですよね、そのままだと。

 うん。昔、最初に役所に入った頃は、あと十年したらどういうふうにやるぞ、と言ってるんだけど、そうではないわけですよ。どうやって、よく言う「命の参入」っていうね、食料を作るってことは自分の命の過程を作ってるってことでもあるので、まず、なくならないとは思うんですよ。ただ、なくならないけれども、どういうふうな形態でやるか、とか、実際に後継者が育ってくるのか、とか。
 そういうところで、昔はそれこそ世襲で、自分ちの長男が必ずやるという形だったけれども、そうじゃなくて、外部の力をあてにしないと、というか、そういう人たちが参加できるようにしないと、回っていかなんじゃないかな、という気がするよね、これから特に。
 そういうのに対応できるにはどうやったらいいんだろうな、と。そういうのを先駆的にやっているところもあるので、そういうのを見ているんだよ。
 去年も、(石井)透公君と一緒に見に行ったんだけど、農業生産法人という形式のところを。じゃあ農業生産法人がすべていいのかというと、そういうことでもないし、何が自分たちの地域とか、そういうのにマッチしているのか。あとはやっぱり、農業生産法人をやっている人たちはみんな農協系統の出荷ではないわけですよね。自分で販路の開拓をしている。

 農家さんて、作るの上手なんですよ。これはもう、本当にプロですから。でも、売るのは下手です。
 それはなぜかというと、農協という大きな組織があって、そこで買ってもらって、売ってもらっている。だから、農家さんは自分でものを作っても、値段をつけられない。
 たとえば、トヨタが車を作ったときに、相手に値段つけてもらわないですよね。(笑)

――それはそうですね。これは人気の車種だから二百万円だ、とかにはならないわけですよね。

 うん、だから、「今回はちょっとさ、買う人がいないから、もっと安くしないと売れないよ」とかいうふうにはならないわけですよ。絶対的な定価が決まっているわけですよ。
 でも、農家はそうではないですよ。市場でいっぱいだったら安くなる、とかね。
 かかっている生産費とか、そういうのはぜんぜん変わらないはずなのに、その時の相場みたいな感じになっているから。せっかくちゃんとしたものを作っているのだったら、自分でちゃんと値段をつけて、販売できるようにした方がいいのではないかな、と。

――そういうふうにすればこそ、大豊作だから逆に供給過多になって困って、とは違ったことになるということですよね。

 だね。逆に、それこそ去年の野菜みたいに、白菜ひと玉1000円とかっていうね、ああいうのおかしいでしょ。鍋が食べられないとかね。本当はそうじゃなくて、需給、需要と供給のバランスということを最初にある程度決めていかなかったらね。
 例えばそういうのが消費者さんとちゃんと結びついているのであれば、「今年はいくらでいいですよ」というのができる。
 自分たちがきちんと消費者と結びついていければ、と思うんですね。

――なるほど。ありがとうございました。ここで一度区切りにしたいと思います。


まとめ
 吉成さんはあくまでも静かに、しかし強い情熱をもって天栄村ファームコンソーシアムへの意気込みを語っていました。
「データを共有し、活用すること」
「広く後継者を集め、育てること」
「よいものをつくり、安定した価格で供給すること」
を柱として、これからの米づくり・人づくりを変えていくということが、吉成さんの描くTFCの目標と受け止めました。
 私も広報として、種まきや田植え、稲刈りのなどの作業現場に密着取材し、稲穂メンバーの取り組みについてもレポートしていきます。