馬場吉信(稲穂メンバー)インタビュー 第1回

馬場吉信(稲穂メンバー) インタビュー第一回(抄録)
収録:2018年4月13日
聞き手:島村 健(TFC広報担当)
立ち合い:土屋遥一朗(TFC早苗メンバー)

1.TFCコンセプトのおさらい

今日は土屋さん、島村さんに向けて、ざっくり、天栄村ファームコンソーシアム(以下、TFC)コンセプトをおさらいしたいと思います。

先日金井景子先生とかも入って話し合って、「参画と協働」ていう中で、いろいろやっていこうかということがコンセプトでいいよね、ということが総意で、TFCのコンセプトは「参画と協働」、これでいこうと。

〈早苗チーム〉は大学の関係とか、「これから(の田んぼ)」が中心。早苗は苗だから、種まきをして、成長して、刈り取りまでっていうことが一つの流れで。それを短期・中期・長期、「参画と協働」という基本理念、コンセプトに基づいて、スタートをしつつ、短期的には「何やるべ」、と。中期は「こんなことできたらいいね」、と。長期的には、「こういうふうにもっていきたいよね」、ということが、島村さんのコーディネートになるという風に思うのね。

藤村正宏という著者の『エクスペリエンス・マーケティング』って本がある。どういう内容かというと、「技術を売るな」「体験を売りなさい」ということなの。技術を売るよりも、体験を売ることに軸足を置いた方が、文字通り身になるスピードが速いですよ、ということなのね。

(その本の中で)恋愛についての話もちょっとしていたけど、例えば、カップルが二組、食事をしていましたと。聞くところによると、(それぞれの)彼女が一週間後に誕生日らしい。で、藤村正宏がそこで二チーム、二カップルの話を聞いているんだけど、Aチームは、彼女に彼氏が、「今度、君の誕生日に渡したいものがあって。実は指輪を買ったんだよ」。と言った。Bチームの彼氏は、「今度、この次の土曜日に会ってくれる?君が気に入るものを準備したんだ」と。話を聞いていると、もう一週間後のシナリオを、Aチームは指輪ということで言っている。でも、人って面白いもので、それじゃワクワクドキドキ感は何もないんだろうと。総評して、「技術を売っちゃいけない、体験を売りなさい」。結局そういうことをうまく、イベントにしても工夫してできたらいいな、という話をさせてもらいました。

 

2.農業の5つのサイクルについて

今度は現実のお話なんだけど、いいですか、〈生産〉〈販売〉〈流通〉〈加工〉〈消費〉がひと廻りして戻ってくるはずです。この5つがくるくる回ってくる。例えば生産のときに、使っちゃいけない除草関係の薬を使ったりすると、必ず人の口に入るものですから、回ってくるのね。ちゃんとしたものを使うことが、文字通り、いずれ自分に返ってくる、ということなんかも、当然米作りを通じて感じていることだと、私は思います。

結局そういう流れの中から、私のやっている仕事(※コンサル業務)の関係で、TFCにほぼ似た考えの形をとっていかなきゃならないな、と思うことが実はありまして。ちょっとそれをこれから話します。

国が今、全国的な人口減少をどう食い止めるかということで、「地方創生」、そのくくりの中で、「人口ビジョン」「総合戦略」というものを、国が自治体に対していろいろと計画を作りなさい、ということを言ってます。それに対しては補助金も出しますよ、と。結局私はそこの仕事に関わりを持っているわけなんだけど、じゃあ具体的にどうしようかということで、地方自治体がいろいろとやっています。で、それを前振りに天栄村に置き換えたときに、「稲作研究会」というものがありました。これは、村がどんどん成長していってほしい、というのがまず一つあって。ただ、これから私たち農業従事者が高齢化していて、後継ぎもなかなか見つからないかもしれない、そうしたときに、どういう手立てをすることが、天栄村の姿なのかな、という形を考えたときに、人口を増やすためには、出ていく人を少なくして、入ってくる人は大歓迎、あとは産んでもらうしかないのね。イコール天栄の産業、一次・二次・三次産業なんだけど、もろもろそういうことから、今からもうすでに、米を売ることが一番の目標ではなくて、天栄村を売るのには、米を、ずばぬけていいものを作って行くことが、文字通り天栄村が売れること、相乗効果なんだよね。

 

3.パブリック・インヴォルブメント(PI)

この豊かな自然を次の世代にバトンタッチしていく方法、手段がPIね、「パブリック・インヴォルブメント」。(土屋くん、分かるよね、PIの原理。)

例えば俺と土屋くんが、「じゃあ、こういうことしようね」で、何か始まったと。で、この次は、おのおの、もう一人ずつ人を連れてきて、同じ話をしようと。その次は、またそれが、もう一人ずつ連れてこようと。どんどんそうやって活動していくこと、それが、全体の中の20パーセントわかってきたとき、要は認知点、パブリック・インヴォルブメントの結果が出たという評価をしています。

そういうことがあって、要はみんなに認知をさせよう、我々もしようと。天栄村は米がすごいな、うまいな、と。それが天栄村の売りになる、と。で、そのときに技術のノウハウはあるので、それを稲作研究会が平成19年度に立ち上げ、10年経ちました、と。その中でいっしょうけんめい進んでいると。それで、私どもは何でTFCを立ち上げたんだと。稲作研究会の取り組み、それをベースにしつつ、それからまだこれからの手立てとして、一つ手を打っておく必要があるだろうと。それで、TFCを立ち上げたことに他ならないと、今ね。

じゃあ、これからはどうやっていくかというと、基本的に、今の人口ビジョン総合戦略も含めてなんだけど、「本来あるべき姿」論、これを語っていったりとかね、「こうだよなあ」と。それをこれからの参画と協働の中で、実際に(米を)作ることプラス、本来あるべき姿・形、それを着実に、PIの原理のもとにやっていく方法しかないというふうに、実は考えています。

俺は評論家みたいなことを言ってると思われてもいいんだけど、そうしないと、まず誰かがいっしょうけんめい走らないと、認知されないと、結局ダメなんだよ。まずそれを、「協働と参画」、何回も言うけれど、それを柱にしてやっていきましょうということなんだよね。あるべき本来の形・本来の姿を、きちんと検証しつつ前進しましょう、と。で、その姿を見て、賛同する人は大歓迎。大きく、集合体を新しく、次の手を打つという役目を、生意気だけれども、担っていかなくてはならないのかな、と考えています。

 

4.コンパクトシティとTFC

先ほどの、地方創生―人口ビジョン・総合戦略に基づいてなんですけれども、たぶんですよ、人が少なくなる、農業もだんだん衰退していく、そうしたときに、じゃあどうするの、と。いくらやっても限界があるし、いろんなものをクリアしても、金もきつい。周期的には大変な時期にはなってくると。ただ、体育会系で、頑張るぞー!とかってシュプレヒコールを上げたって、人が減ってくるとかそういうことは、歯止めがたぶん利かなくなる。だけど、スローランディングする手立てとして、どういうことがいいのかな、と。例えば、国が今推奨している中で、人口ビジョン・総合戦略の次の手として、「立地適正化」計画を、市町村で、いっしょうけんめい今立ててます。どういうことかというと、人口ビジョン・総合戦略を立てたその上の話ね。合併市町村、これも天栄村の、私らのおかれているTFC、それと、同じような考えに収まるような気がするので、ちょっと思ったことをお話しますけれども。

合併市町村で、市が一つあったと。そこに、予算が大変な自治体がスクラムを組んで、一緒にやっていきましょうという形で、財政の厳しいところが大きな市・あるいは町と一束になって、なんとかやっていきましょう、寄り合い所帯でこれから対応していこう、というのが平成の合併の基本コンセプトなんだよね。で、そういうことの中から、例えば、ここ(机の中心を示す)に力ある市があって、ここに、それぞれこういうふうな町とか村(机の周辺を示す)があったりして、どんどん人口が減っていくわけ。過疎中山間地域。ここもそう、ここもそう、ね。で、今国は、立地適正化で、何をしようとしているかというと、「コンパクトシティ」。どういうことかというと、せいぜいここの、中心のところだけ、元気にするべよ、と。ここをね。これ、これが俺はファームコンソーシアムだと思うの。

で、例えばよ、言葉的には申し訳ないけど、小さい村とか、そういうところに今まであった役場とかを、小さな拠点として、そこは何とかバックアップしていこうって言ってるんだけど、いずれ、人でいうと年取っていってしまって、そこが若返ることはないのよ。「切り捨てか?」っていう論理もあるんだよね、中心だけコンパクトシティとして元気になって、周りは全部切り捨てなのか、っていうふうな、議会人の質問も実はあります。で、首長さんも、選挙とか、そういう計画で大きく関わりを持っているのが事実だから、慎重にやらなくちゃいけないんだけど、地方特性をないがしろにして、霞が関の原理を持ってきても、成り立たないのよ。農水の話もそう、農林の話もそう。それを天栄村にそのまま置き換えたところで、これはなかなかものになりません。

じゃあ、どうしていこうかというので、まずは、小さな拠点は小さな拠点で、切り捨てはしない。しかしながら、何とかそこは、真ん中の中心のところが元気よくしていないと、助けられない。真ん中が一番柱になるべきところがゆらゆらしていると、みんなダメになっちまうよ、と。だから、ここの、一番柱になるところは元気でいたいよね、ということで計画を進めています。

 

5.ポジティブな相互依存=「共存」をめざす

イコール、総評して、今その言ったような話が「相互依存」という言葉で表される。例えば新しい病院は中心市街地、コンパクトシティに集約して作る。中心以外にも元々の小さな病院はあるけれど、人のいないところに大きな病院を作ってもダメだから、総合病院は中心に作ると。中心、ここが元気じゃないとダメだし、それはどこの自治体、全国で1400幾つの市町村でそういう考えは持っているんだけど、実際に何をどうやっていいかわからない、だからモデルを作りましょうということで、ようやくこれからの姿、ビジョンづくりが本腰を入れて始まってきてるというのが、今の姿です。

合併後、特例さえも終わった、じゃあ本当にこれからどうやっていくべ、と。建物はどんどん古くなっていく、修繕をしなくちゃいけない、それにもお金がかかる。国もね、お金がないので、計画を作らないと交付金をやりませんと言ってる。で、100パーセント補助できるかというと、まったくそんなことはない、無い袖は振れないから。そんなところに頼っていても、いつまで待っても空からお金が降ってくるわけじゃないので、この次は、中心の元気なところが周りを引っ張っていこうと。そのために、ここをいっしょうけんめい元気にしようといっているのが立地適正化の本筋。

天栄村も、研究会とかいろいろあっていいんだけど、TFCもここの中心地の考えのもとに歩んでいければ、と思っているんです。コンセプトイコール、決意と覚悟なので、それ以外でもないし、それしかないと、そんなふうに実は思っているんです。

相互依存、ここになくて、もっというと天栄村になくてよそにあるもの、例えば首都圏とかね。そして首都圏になくて天栄村にあるもの、そんなことも、相互依存の中で見つけていければいいかな、と。相互依存というか共存、俺は共存だと思っているんだけど、依存って言葉はあんまり好きじゃないので。相互の共存、それが参画と協働にまた戻っちゃうんだけど、そういうことが、これからの短期・中期あるいは長期計画になっていくことが、本来望ましい形なのかな、と思っています。

――ありがとうございました。ここで一区切りしたいと思います。(島村)